Riotは現役バンドという話 ~来日公演を観に行くのだ~
川崎のライブハウス・クラブチッタが30周年ということで、ゆかりのあるHR/HMバンドが来日して記念公演を行っておりますが、その第三弾としてアメリカの超ベテランバンド・Riotが2Daysライブをやることになりました。尼野ゆたかも11日の方に行って参ります。
Riotはアメリカのハードロック/ヘヴィメタルバンド。ギタリストのマーク・リアリを中心として1975年に結成されました。
様々な困難、度重なるメンバーチェンジにも屈せず、2012年にマーク・リアリが死去する*1という最大の危機に直面してもなお活動を続ける道を選んだという、まさしく鋼鉄の信念を持ったバンドです。
本当を言えば、各アルバムについて詳細な検討を加えつつRiotの魅力と偉大さを説き起こし、もってRiotを知らない人やヘヴィメタルに詳しくない人の理解に資する記事としたいところなのですが、ナントカ暇無しというやつで時間がないので、「過去のバンドではない」というポイントに絞って書こうと思います。
まえがき ~Riotは現役~
おそらく大半のRiotファンが、かつてのアルバム「Thundersteel」や「Rock City」、「Fire Down Under」などを一番の作品として挙げられることでしょう。
それらのアルバムなり楽曲なりが素晴らしいことについて、異論はございません。
しかし、過去の栄光が眩いことをもって、現在の彼らの輝きを軽んじることもないのではと思うのです。そう、Riotは今でもシャインオンな現役バンドなのです。
死せざる魂
2011年、Riotは5年ぶりのニューアルバム「Immortal Soul」を発表しました。
超絶ハイトーンシンガーとして名を馳せたトニー・ムーアと、メタルの枠を超えた圧倒的なテクニックを誇るボビー・ジャーゾンベクという二人の元メンバーが復帰したこともあり、復活作として扱う声が多かったように思います。
しかし、まあ後出しなんで話半分に聞いて頂ければと思いますが、自分としては今までと違うんじゃない? と思う場面もありました。
たとえば中近東メロディを導入した"Crawling"や、憂いとヘヴィネスが交錯する"Fall Before Me"など、明らかにこれまでと路線が異なる曲が目立ちますし、そもそも一曲目"Riot"からして雰囲気が違うんですよね。
バンド名を冠した"Riot"はアルバムの幕開けに相応しいスピーディな曲で、印象深いメロディにリードされて曲が始まるのですが、Riotの伝統としてこういう曲はリフで組み立てられたイントロを持つ構造であることが多いんですよ。*2
そういうわけでなーんか違うなと思ったのですが、CD買った時はブックレットにComposed By Riotとか書いてあったので、「みんなで作ったからかなあ」などと納得し、そもそもどの曲も魅力的なのでこれはこれでありだと聴きまくっておりました。
しかし、その後明かされた事実は衝撃的なものでした。
制作中既に病魔がマーク・リアリの体を蝕んでいたため、彼以外のメンバー(ギタリストのマイク・フリンツやベーシストのドン・ヴァン・スタヴァーンら)が中心となったというのが本当のところだったと。それゆえに曲の雰囲気が違っていたのですね。
実際、英語版Wikipediaを見ると、(出典が明記されているわけではありませんが)マーク・リアリの関わった曲は半分にも満たないという風に記されております。
すなわち、このアルバムは事実上新生Riotの第一作だったのですね。死せざる魂と名づけたのは、今思えば継承宣言であったのかもしれません。
そして上にも書いた通り、その宣言に恥じぬ素晴らしい内容を持っていたわけです。
誇りと共に放たれる炎
その後、トニー・ムーアとボビー・ジャーゾンベクが離脱。バンドは、マッチョなイケメンシンガートッド・マイケル・ホールと、以前にも参加していたドラマーであるフランク・ギルクライスト、そしてマークの穴を埋めるギタリストにニック・リーを加えて活動を継続。アルバム「Unleash The Fire」を発表しました。
アンリーシュ・ザ・ファイア(ツアー・エディション(紙ジャケット仕様)
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ライオット マーキー・インコーポレイティド 2015-08-19
これがまた素晴らしいアルバムでして。楽曲の充実は勿論のこと、新たに加入したメンバーたちがバンドに新しい生命力をもたらしているのです。
中でも、トッド・マイケル・ホールの貢献度合いたるや尋常ではありません。彼のダイナミックかつ力強い歌声が、全編にわたって圧倒的なエネルギーを発散しているのです。
システムキッチンか何かを作る会社の二代目社長らしい彼ですが*3、メタルシンガーとしての実力はまさに超一流です。2015年にはライブ(大阪公演)を見ましたが、ライブでも一切の乱れなく完璧に歌いこなしていました。すごい。
システムキッチンか何かを作る会社の二代目社長らしい彼ですが*3、メタルシンガーとしての実力はまさに超一流です。2015年にはライブ(大阪公演)を見ましたが、ライブでも一切の乱れなく完璧に歌いこなしていました。すごい。
トッドの話ばかりになってしまいましたが、他のメンバー達の踏ん張りも見逃せません。ニック・リーはテクニカルなソロ要素をバンドにもたらし、フランク・ギルクライストはパワフルなドラミングのみならず"Kill To Survive"の作曲に加わっています(この曲がまた格好良い)。
新メンバーの加入が、バンド内で新しい化学変化を生み出したことが窺えます。新しい血も躊躇わず受け入れ、前へと踏み出す姿勢を打ち出したわけですね。
PVが作られたこの"Take Me Back"では、そんなバンドの矜持が歌い上げられています。
「奴らは言う。『お前達はもう無理だよ。あの日々は終わっちまったのさ』/しかし俺達はガッツと栄光でこの物語を綴ってみせる/夢はまだまだこれからだ」
意訳気味にしましたが素晴らしい……。歌詞を読むだけで目頭が熱くなると言う経験はそうありません。
マークリアリ発病以前にも、事実上の活動休止状態に追い込まれたり、マネージメントとの争いが訴訟に発展したりと、Riotの道のりはまったく平坦なものではありませんでした。だからこそ、このメッセージは圧倒的な説得力で胸に響いてくるのです。
PVもそんなテーマに沿って、バンドが出会ってきた人達の過去と現在の写真を並べる作りになっています。
日本のメタルバンドとして初めて全米チャートにアルバムを送り込んだ……という輝かしい肩書きで語られるLoudnessですが、マイク・フリンツとツーショットで写っている姿(どう見ても自分らで撮ったプライベートな写真)からは、等身大のロックミュージシャンとしての朗らかさが見えてくるようです。
ところでLoudnessといえば、以前雑誌のインタビューでメンバーが「Riotはえらい。彼らは今でも自分らで設営を行う。ボーカルがドラムセットの片付けとかしてる」「住んでいる所がバラバラなので、ツアーに出たらホテルで一生懸命練習してる」と賞賛していました。
これも胸を打たれるエピソードです。武士は食わねど高楊枝みたいに気取るのではなく、用心棒でも大道芸でも何でもやって刀を錆び付かせないようにしながら生き抜くというのも、誇り高い生き方といえるのだなと。
勝利と叫ぶのだっ
バンドの心意気と地道な活動は、新しいステージへの道を切り開きました。
今年に入ってRiotはヨーロッパの有名なメタルレーベルと契約を交わし、4/25に晴れて新譜「Armor Of Light」を発表する運びとなったのです。
先行トラック"Victory"のリリックビデオ。勇壮でスピーディ、実に格好良い!
Riotが、現在進行形のバンドであることの何よりもの証左たる曲です。新譜も心から楽しみですね。Riotは今を生きるバンドなのだ!
あと、蛇足ながら触れておきたいのが、鋼鉄の剣を振りかざして勇敢に戦うのだ的な歌詞の素晴らしさ。
そりゃあまあ、「歌と言えばきみとぼくあなたとわたしの恋愛」みたいなポップス的価値観からすれば、バカっぽく聞こえるもしれません。
でも、音楽が人の心を表現するものだとすれば、こういうものもあっていいと思うんです。「勇気を持って立ち上がる」のも、人の在り方の一つなのですから。
日本の音楽だと多分アニソンが伝統的に引き受けてきた領域なのでしょうが、ヘヴィメタルはそこに「題材が……」「主題歌だから……」みたいな前置きなしの直球を投げ込んでくるのですね。
蛇足をもう一つ加えますと。
このリリックビデオ、Riotのマスコットキャラであるアザラシ男(名前はジョニー)をあしらったアルバムジャケットだけでなく、メンバー達を描いたイラストが出てくるのですけれども(サムネイルにもなっているヤツ)、楽器陣がみんな旗とか剣とか槍とかを持っている中、フランク・ギルクライストだけなぜか普段通りドラムスティックを握りしめているのが面白いところです。あくまで己のドラミングで勝利を掴み取るという意思表示か何かなのでしょうか……。
おわりに
そんな感じで気がつくと結局長い文章になってしまいました。なにがポイントに絞ってだという感じですが、まあ字数制限がないというのはとても心地良いものなのでして。
なんにせよ、おつき合い頂いた方はどうもありがとうございました。Riotいいよ。
追記
amanoyutaka.hatenablog.comライブ行ってきました。こっちも長いぞ。
BGM: Bloodstreets / Riot