お茶零した。

作家・尼野ゆたかの日記です

Riotはやはり現役バンドでしたという話 ~来日公演の二日目を観てきたのだ~

川崎に向かったのは、ライブハウス・クラブチッタで行われるRiotの来日公演2daysの二日目を観に行くためでした。

 

 

 

amanoyutaka.hatenablog.com

 

 

ライブに行く前に書いた記事。自分で読み返してもえらいテンションで書いてますね。"Kill To Survive"を疾走曲と書いたり*1、勢い余っている部分も散見されます。お恥ずかしや。
 

タイトルにも書いた通り、Riotは現役バンドであるというのが上の記事におけるテーマでした。現時点での最新作「Unleash The Fire」、そして前回の来日公演でもその事実は明らかだったので言い放ったわけですが、今回のライブを通じて確信はより強まりました。

Riotは、「今」のバンドです。

 

予習するのはいつも曲だけ ~故に強烈なサプライズ~

自分が参加したのは3月11日。二日目でした。基本的に前もって詳細な情報を集めないものでして、開演前に「休憩を挟んで2部構成」「11台のカメラで撮影」なんてアナウンスが流れた時には心底ぶったまげました。

Riotはツアー中なわけでもなく、前回のライブは12月のイタリアで次のライブ予定は夏の欧州メタルフェスです。新譜のレコーディングをしていたはずですし休眠状態だったということはないでしょうが、それでもアメリカからやってきていきなり二日連続で二部構成のライブをやるのはさすがにハードなのではないでしょうか。
 
そもそもRiotの曲はドンパンドドパンジャージャジャーのシンプルな8ビートロックというより、それなり以上にややこしげなプレイを含んだものが多いです。演奏をかっちりまとめ上げるだけで結構大変でしょう。
しかも、メンバーは一人だけ三十前後の人間*2がいる以外はアラフィフのおっちゃんたち。体力的にも厳しいでしょう。
 
今回の2Daysは、クラブチッタの30周年を祝うために継続して行われているイベントの一環なのですが、他にここまで全力を挙げて祝いにかかってきたバンドはいません。ほ、ほんまに大丈夫なん?
 

尼野の心配休むに似たり

結論から言うと杞憂でした。そう、今のRiotのライブの出来不出来を心配するなどというのは、空が落ちて来ぬかと憂えるのと大差ないほどに無用なことだったのです。
 
新曲も織り込みつつバンドの代表曲を網羅した第一部、長いRiotのキャリアの中でも一、二を争う人気を誇る名盤「Thundersteel」を完全再現した第二部、そしてアンコール。最初から最後まで、バンドは圧倒的な演奏でもって駆け抜けました。

 

 
中でも特筆すべきは、やはりフロントマンたるトッド・マイケル・ホールの圧倒的な声でしょう。
 
ヘヴィメタルという音楽のボーカルは、男女問わず相当にアクロバティックな歌い方を要求されることが多いジャンルであるが故、ライブにおいて徐々に歌に疲れが感じられるということも少なくありません。
しかしトッドは、二日連続二部構成という普通ないようなスケジュールにおいても、なお一切揺るぎないハイトーンを響かせていました。いや本当に凄いです。
 
"Angel Eyes"では当時のボーカルであるマイク・ディメオの如くえいやっとマイクスタンドを振り回してみたり、最初期の名曲"Warrior"では初代ボーカルの故ガイ・スペランザの如く朗々とハモリパートを歌ってみたりと、Riotというバンドの長い歴史を感じさせてくれたのも嬉しいところでした。意識してのことかどうかは分かりませんが、どうだったのかなあ。
 


またトッドは、MCで「明日からは普通の生活に戻らないとなあ……」「子供が三人いるんだぜ」なんて話をしていて、キッチンの関連用品を販売するGlastender社の二代目社長として、父や妹や妹の夫と共に働くという(下の方に写真あり)彼のもう一つの横顔が垣間見えました。長髪を後ろでくくり、マッチョな上半身にシャツを待って商品の説明をしている動画なんかもあり、ビジネスマンとしても頑張っているのだなあと。

 
さてトッドの話ばかりしましたが、他のメンバー達もそれぞれの輝きを放っておりました。
 
故マーク・リアリの遺したギターソロを引き継ぎ、バックコーラスも担当しと八面六臂の活躍を見せていたマイク・フリンツ

最年少ながらツインリードの一翼をきっちり担い、溌剌とした動きを見せていたニック・リー。

がばがばアルコールを摂取しながら、55歳という年齢を感じさせないエネルギッシュなパフォーマンスを繰り広げていたドン・ヴァン・スタヴァーン。

そして、時折やたらややこしくなるドラムパートをきっちり再現しつつ、パワフルに叩きまくってヘヴィメタルという音楽に必要な駆動力を稼ぎ出していたフランク・ギルクライスト。 


住んでいる場所はばらばらであり、ホテルで練習することもあるらしい彼らですが、そんなハンデを微塵も感じさせない圧倒的な一体感がそこにありました。
老いも衰えも一切ない、純然たる熱量の炸裂。ああやはり彼らは今を生きるバンドだ、この気概溢れる音を現役と呼ばずなんとするか!
 
 


第一部も第二部もよかった

バンドの気概は、演奏のみならず第一部の選曲にも現れておりました。
次に発売される新譜のタイトルトラック"Armor Of Light"で幕を上げ(これがとても格好良い疾走曲だった)、現時点での最新作"Metal Warrior"で終わるというこの強気な構成。「ただ過去の栄光にすがるのではなく、現在の姿をオーディエンスに届ける」という意思が滲み出ているように感じられてなりませんでした。
 
一方で、バンドが積み上げてきた歴史と、過去の名作に愛着を持つファンを軽んじることはなく、第二部では「Thundersteel」全曲演奏を実に真摯に行っていました。
ヘヴィメタル史上に残る名曲"Thundersteel"で幕を上げ、"Buried Alive (Tell Tale Heart)"でモヤッと終わるあの流れを再現するのみならず、ライブならではの感動、ただアルバムを再生するだけでは得られない生きた「体験」としての音楽を鳴らしていて、その場を共有できたことを誇らしく思える程でした。もう二度と無い、あの時だけの瞬間を自分は確かに経験したのだ、と胸を張れるような、そんな感じです。
 
全曲演奏の中で個人的に胸を打たれたのは、"Bloodstreets"でした。
孤独な戦い、それでも逃げるわけにはいかない。理由もなく歩み続けていると、命がこぼれ落ちていくよう。明日の光は、ひどく遠く感じられる――多分そんな感じの寂寥たる歌詞世界を、時に切なく時に激しく表現していく様に、思わず感極まる瞬間が多々ありました。
 
"Thundersteel"とか"Flight Of The Warrior"とか"Fight Or Fall"みたいな速い曲が格好良かったのは勿論ですが、現在のRiotがスピードナンバーの魅力を完全に引き出せるのは言ってみれば当たり前のことであり、この"Bloodstreets"のようにやるせない感情を切々と語る曲を演奏しきるというところに更なる強みを見た思いです。

 

格好良いTシャツが売り切れていた

もう一つ触れておきたいのが、ライブグッズの定番であるところのTシャツ。

 

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http://clubcitta.co.jp/001/riot-2018/img/RiotT-B.jpg

 

http://clubcitta.co.jp/001/riot-2018/より

 

いずれのデザインもとても格好良いのですが、あまりに格好良すぎるので余裕で残ってて買えるだろうと思ったら、着いた頃には両方ともほぼ全サイズが売り切れていました。

どうやら10日と11日にクラブチッタを訪れたこのRiotの格好良さを共有できるファンたちが集ったようです。ふっ……参りました……まだまだ青二才でした……。
 
 
そしてそんなファン達の気持ちに応えようとなったのか、「欲しいサイズが買えなかった人には受注生産する」という旨が売り場に張り出されていました。

これには驚きでした。Tシャツの売り切れくらいはちょいちょい見たことがありますが、受注販売してくれるというのはあんまり記憶にありません。というかむしろ心配になります。大丈夫なのか。ペイするのか。Glastender社が損失を補填するハメになったりしないのか。

 

 

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なんとか購入。結構好きなイラストです。顔はみんなよく特徴を掴んでますし、トッド・マイケル・ホール(中央)のマッチョな体格やニック・リー(右端)の小柄さ、そしてフランク・ギルクライスト(左端)のちょっとだらしない体型までさりげなく描かれています。


しかし何度見てもフランクだけ装備がドラムスティックなのが面白いです。生涯ドラマー宣言的な心意気を感じる。
 
 

山下昌良とジョニーの大群、そして正統派メタルを正当に愛するということ

アンコールラストの"Warrior"では、Loudness山下昌良が飛び入り参加。自分たちのインタビューでわざわざRiotを褒めてたり、自分もツアー中であるにもかかわらずこうしてやってきたりす。前の記事でRiotのPVに高崎晃が出てくることに触れましたが、RiotとLoudnessの間の絆の強さみたいなものを感じたりしました。


トッドが「マサヨシイイイイ」とコールしたときには「マサ・ヨシイ? マサイトウの新型か何かか?」と当惑したのですが、それが山下昌良だったと分かったときには仰天でした。
実際マサイトウも来てたみたいですけどね。2階席にいたみたいでご尊顔は拝見できず。以前Maidenだったかの城ホールの公演で、入り口のあたりで携帯で話しているところを「マサや」「マサイトウがおる」と客達に遠巻きで写真撮られてたのが最後に見たマサです。後はテレビでだけだなー。
 
ちなみに"Warrior"で飛び入り参加したのは山下昌良だけではなく、バンドのマスコットであるアザラシ・ジョニーのマスクを被った革ジャンの人間も大量に乱入してました。
1stアルバム「Rock City」においてジョニーが持っていた斧をきっちり再現している人もいれば、それほとんど包丁ちゃいますのんみたいな人もいてわやくちゃでしたが、お祭り騒ぎでとても楽しかったですね。

 

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要するにこんな感じのがいっぱい現れたわけです。楽しいに決まってますね。

しかし何度見ても激烈なジャケです。「怒りの廃墟」という原題完全無視の邦題がついていたことでも有名ですが、この絵を見たらそりゃまあロックシティと言うより怒りの廃墟ですわな……。

 
しかし考えてみれば、第二部冒頭に幕に映し出されていた謎のイメージ映像(稲光の静止画像が雷の音に合わせて伸び縮みしたり、ファンタジックなイラストをバックに"Thundersteel"の歌詞がナレーションつきで表示されたりする)などもそうでしたが、こういうどこか垢抜けないところにRiotのヘヴィメタル性を感じたりもします。
別に当代の洒落てるメタルも、それはそれでいいのです。しかしやはり、時代に左右されないというかされようがないこういう美学もまた、メタルの醍醐味ではないのなあと思う訳なんですよ。だめ?

 


終わりに

今回も長々と語ってしまいました。今いくつも仕事を抱えている状況だというのに。

とにかくRiotは現役でした。新譜も楽しみ。次の来日も楽しみ。どんなTシャツ持ってきてくれんねやろ。さあ原稿しよう……。

 

 



新譜「アーマー・オブ・ライト」は4月25日発売です。

お前らアーマーオブライトなんだから鎧着ろよ! なんで揃って上半身を晒しとんねん! 人間には見えない波長の光でできた鎧かなにかなのか……。

BGM: Sign Of The Crimson Storm / Riot

*1:サビやギターソロ後半はスピーディだけど全体としてはそうでもない。修正済み

*2:ギタリストのニック・リー