お茶零した。

作家・尼野ゆたかの日記です

ドイツのメタルバンド・Rageの来日公演を観に行くのでそのRageについて少し書く

来たる2月24日、ドイツのベテランメタルバンドRageのライブがあります。
おっさんバンドのライブばかり行ってる気がしますが、別にベテランしか観ないというわけではないんですよね……ただタイミングが合うバンドがたまたまそうなだけで。
 

 

Rageのキャリアは、実に30年以上。唯一のオリジナルメンバーであるピーヴィー・ワグナーを中心に活動を続け、前身バンドと合わせると23作ものアルバムを出しています。

ライブ行くし、ニューアルバムだけじゃなくて過去作も予習しようと軽い気持ちで聴き返し始めたら一周一周長距離走でした。
 
 

一番好きなのはいつ頃? ~まあ思い出補正というものもあるだろうけども~

その時々で様々な形の音楽を追求してきたRage。どの時期もそれぞれ魅力的ですが、個人的に一番印象に残っているのはギタリストのヴィクター・スモールスキが在籍していた時代です。1999年から2015年か。
 
 

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初めてRageのライブを観たのがこの編成の頃というのもありますが(確か2005年の20周年ツアー)、やっぱりこの頃の曲に好きなものが一番多いんですよねえ。
 
 
 
2002年発表の第15作「Unity」のリードトラック。ヘヴィかつ技巧的なギター、そして翳りと憂いに満ちたヴォーカルメロディ。中でもサビが素晴らしい。
ヴィクター時代のRageのエッセンスがぎゅっと濃縮された曲です。ライブの定番曲でもありました。
 
Rageのビデオは、長らくライブの映像にスタジオ音源をかぶせただけのものとかピーヴィーが山を登って化石を採掘するものみたいなのが多かったのですが、このビデオ辺りからそれらしい感じになってきてますね。「お前が落ちぶれていくのを見ててやる/最後に笑うってのはいつだって最高だぜ」という、悪意に溢れる歌詞の世界を映像的に表現しております。当時のドラマーであるマイク・テラーナのモヒカン+ムキムキ上腕という「時はまさに世紀末」なルックスも、その空気にフィットしている感じ。
途中挟まれるエデンの園的風景で色合いが急に変わって少しぎょっとしますが、全体を通して格好良い仕上がりになっているのではないでしょうか。
 
 
 
上に書いた通り好きな曲は沢山ありますが、ビデオになっているものでいうと、21枚目のアルバム「21」(2012年発表)のタイトルトラックであるこれも挙げときたいところかな。
ギャンブル依存の男の破滅を歌った曲だけに、舞台はカジノ。みんなで小芝居したりしてます。モヒカン男マイク・テラーナに替わって加入したアンドレ・ヒルガースも、割とノリノリで演技してるように見えます。
一番強烈なのはやっぱりヴィクターの変幻自在なソロ。クラシック音楽をバックグラウンドに持ち、歴代ギタリストの中でも屈指の技術とセンスを持つ彼の面目躍如といったところですね。
 
 
ちなみにアルバム単位で挙げるなら、上の二つが収録されてるものもさることながら、いややはり2003年発表の「Soundchaser」か2008年の「Carved In Stone」かなあって感じになります。
 
 

 

ほんと良いのが多くて選べないんですよ。「一番のお気に入りは?」とか「メタルバンドで好きなのは?」と聞かれると割と困る口です。

 

ヴィクターが辞めた後は? ~マルコス・ロドリゲスという逸材、そしてRageの一貫性~

とこんな感じで充実していた時期なのですが、反比例してメンバー間の関係は悪化していったらしく、2015年にはラインナップが空中分解してピーヴィー一人に。
そこでピーヴィーは新しいラインナップを編成しようと決意。ベネズエラ出身でスタジオミュージシャンとしても活動しているらしいマルコス・ロドリゲスと、2014年からRageのマネージャーを務めていたというヴァシリオス“ラッキー”マニアトプロスを加えて活動を再開したのでした。
 
 

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正直プロフィールだけ見ると間に合わせ感が漂いますし、大丈夫かなあ……と心配していたのですが、これが中々にいい感じなのですよ。
2016年に発表された22枚目のアルバム「The Devil Strikes Again」も2017年発表の最新作「Seasons Of The Black」も、いずれも魅力的なアルバムです。
 
 
 
"Seasons Of The Black"の冒頭を飾る"Season Of The Black"です。ややこしいなしかし。
 
轟然としたギターとデスボイスすれすれなほど濁ったピーヴィーの唸り声で押しまくり、サビでRage印のメロディが絞り出されます。
同じヘヴィさでもヴィクター時代とは手触りが違いますが、一方でやはり通底したものも感じられます。
ピーヴィーが声域を低くし始めた辺りから*1、纏う雰囲気もダークなテイストのものに変化していったのですが、今でも一貫しているのです。
 
歌詞を眺めればその辺りは一目瞭然。サビなんて「もはや希望はなく/退路も断たれてしまった/俺たちの最後の夢を葬る時――/それが黒の季節なのだ」ですからね。
もう即決で中二病とか判子を押されてしまいそうなところですが、いやいやこれは喜怒哀楽の真ん中二つを重点的に表現してるってことなんですよ。それができるのがメタルの強みの一つでありますので、怯まず堂々と推していきたいところです。
 
 
マルコスのギターソロは、時にトリッキーで聴き手を振り回すようなヴィクターのものとは違い、ヘヴィメタルの伝統と格式に則った実直な感じのものです。
技術的には(相対的に)ヴィクターのものよりはシンプルなので、するとあんまりにも難しいのは弾けないのかなと思ってしまうとところですが、実際のところはそうでもありません。
 
証拠はこれ。彼がRageに入るよりも前にYoutubeで公開したこのビデオです。
 
 
 
「21」収録の名曲"Forever Dead"を弾いてるんですが、これが実に見事で。ヴィクターのややこしいプレイをさらりと弾きこなしています。ピッキングハーモニクス(途中でいきなり入るギュオオっていう甲高い音)の綺麗なこと気持ちいいこと!
 
難しい曲を弾いた動画っていうのは基本的に「険しい顔で指板を睨みつけて微動だにせずひたすら録音を再現する」っていう印象ですが、マルコスは「この曲いいよねー」って感じで楽しんで弾いてて(ソロのラストはちょっとミスってるぽいけど別に気にしてない)、そこもまたええなあって。
これだけ弾けるならヴィクター時代の曲をライブでも聴きたいところですが、まあ無理か……。
 
今月来月とたくさんライブがあって、でもその全てに行けるわけではなく選ぶ必要があったのですが、これなら割と見応えもあろうということでRageに行くことにしました。他にも行きたいライブはたくさんあってんけどなー……。
BGM: Baby, I'm Your Nightmare / Rage

*1:元々は甲高いハイトーンだった