「司書のお仕事 お探しの本は何ですか?」を読みました
「司書のお仕事 お探しの本は何ですか?」を読みました。著者は、東海学園大学で教鞭を執る傍ら作家としても活躍されている大橋崇行さん。
これは洛陽の紙の値段が上がるやつ
各所で話題の一冊です。
というのはよくある売り文句ではなく、本当にあちこちで取り上げられているのですね。
5/28中日新聞夕刊に書評掲載されました。
— 勉誠出版編集部 (@bensey_edit) May 29, 2018
司書のお仕事ーお探しの本は何ですか? 図書館の日常を詳細に | 文化面 | 朝夕刊 | 中日新聞プラス https://t.co/yb1AEcSJBb
週刊金曜日6/29号に大橋崇行『司書のお仕事』(勉誠出版、小曽川真貴監修)の書評を寄せました。BL本の配架やYAとラノベの棲み分け問題とか、すごく現実的で実際的で興味深い。記述が丁寧なのはもちろん写真が多い点もわかりやすくていい。学生さんだけでなく幅広い世代に読んでほしい。 pic.twitter.com/bK1LFNUooL
— 倉本さおり (@kuramotosaori) June 29, 2018
国会図書館のメールマガジン『カレントアウェアネス-E』No.348で、『司書のお仕事』(勉誠出版)についての著者、監修者、編集者インタビューを配信して頂きました。ウェブでも見られますので、よろしければ下のリンクからご覧ください(前のツイートに誤りがあったので再投稿)https://t.co/B3AcZL8sow
— 大橋崇行 (@oh_mitsukitei) June 14, 2018
多分取りこぼしがあります。あまりに各所で話題過ぎる!
取材と物語の相応しいバランス
小説を書くにあたって取材を行うことは基本の一つですけれども、実際のところそこでうかがった話を物語の中に上手く織り込んでいくのは大変なことです。
時に取材を通じてたどり着いた事実があらかじめ用意していた物語の筋と噛み合わないこともありますし、自分では上手く生かしたつもりでも、客観的に(主に分量などで)問題があると指摘され修正を余儀なくされることもあります。匙加減が難しいのですね。
この「司書のお仕事」が凄いところの一つは、まさにその匙加減にあるといえましょう。
大橋さんによる前書きにもある通り、「司書のお仕事」は司書の人の仕事が具体的にどんなものであるか説き起こすことを眼目としていて、解説的な要素が前面に押し出されています。
「ライトノベルの扱い」や「書籍の分類」といった素人にも「なるほどそういう風になってるんだ」と理解しやすいものから、「図書館運営会社が存在する」とか「基本的に司書はカウンターでは仕事をしてはいけない」ことといった「えっそうなの!?」と驚かされる話まで、様々な切り口から司書さんのお仕事に迫っており、大変勉強になります。
なんて書くと「物語仕立てで司書のお仕事を紹介するパンフレット」みたいなものを想像しがちですが、さにあらず。
三つのエピソードで綴られているのは、主人公・双葉が仕事を通じて成長していく物語。謎解き展開やほのかな恋愛要素など、様々なスパイスを加えながら読者を惹き付け、自然とページを繰らせます。
文学からの引用や図書館/図書室が果たす教育的役割など、難しく感じそうなポイントもいくつかありますが、いずれも上手にストーリーと絡められていて、難しいどころかむしろ興味を思いっきり惹かれるほど。これは羨ましいほどに鮮やかな手並みです。
綿密な取材と、小説としての面白さ。その両立を見事に成し遂げた一冊として、「司書のお仕事」は語られるべきでありましょう。
ところで大橋先生の小説は、「魔法少女あやね」、「五分後に起こる恐怖」、そしてこの「司書のお仕事」を拝読しておりますが、「おっこのキャラのこの反応は大橋作品だからかも」みたいに感じる場面があります。白い鳩が飛んだらジョン・ウーみたいな。他の作品も読まないとだなあ。
勉強したければいつだってそこに図書館が
監修を担当された小曽川真貴さん(現役の司書の方です)による後書きを読みながら、司書という存在がいかに大きな役割を背負っているかを噛み締めたのでした。
「司書の資格を目指す過程で面白さや理念に触れて魅了された」というお話には、勉強すべき時にもっと勉強していればよかったなあ……と自分の浅学さを振り返ってしまうわけですが、
むしろそういう人間のためにも図書館は本を揃え、知への扉を開いて迎えてくれているのですね。実にありがたいことです。