お茶零した。

作家・尼野ゆたかの日記です

「機動戦士Zガンダム外伝 審判のメイス」の2巻の感想をようやく書く

随分と遅くなってしまいましたが、友人であるRohgunさんが作画を担当している漫画「審判のメイス」2巻の感想を。

 

 


三巻構成ということで、1巻を受けつつ3巻へと渡す位置にあるわけですが、しかし単なる繋ぎに留まらない一冊でありました。
迫力の戦闘シーン、魅力的なキャラクター、広がる世界。楽しい仕上がりです。

 

 

まず格好良い

 

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(画像は電撃ホビーウェブ様より)
例えば、二巻前半の強敵であるオーラフを描いたこのシーン。モビルスーツが迫って来て同時にそのパイロットもアップになるという、ロボットバトルものとしては王道のコマ割(でいいのかな?)ですが、もう完全にモノにしてる感じですよね。

 

 

 

 

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(画像は電撃ホビーウェブ様より)

例えば、ヒロインのアイリスが長距離で狙撃を行ったこのシーン。
この一コマだけでも、銃身の長いライフルによるロングレンジショットの魅力は伝わってきますが、ここに至るまでの展開も熱いところです。

 

amanoyutaka.hatenablog.com

 


前回でも書きましたが、このモビルスーツは本来脇役メカでして、そういうマイナーな存在が活躍するのがガンダムシリーズ外伝の醍醐味。

電撃ホビーウェブ様では、ガンプラで再現しようというマニア垂涎であろう試みもなされています(作ったのはなんと担当編集氏)。
こういう様々な角度での楽しみ方が提供されるのを見る度に、ガンダムというコンテンツの奥深さに唸らせられます。いやまあ、いやしくも創作を生業とする人間たるもの、唸ってるだけではいかんのですが。

 

 

キャラクターの幅広さ

 

2巻において特筆すべきであろう点として、格好良い/可愛いという軸だけでは語れない魅力を持つキャラクターの存在感が挙げられます。

 

特に印象深いのが、主人公たちが乗り組む戦艦の副長を務めるビオという女性キャラクター。
その佇まいや漂う雰囲気は、これまでのRohgunキャラからすると毛色が違う雰囲気なんですけれども(アイリスと並ぶように演出されているコマもある)、それゆえに違う彩りを加えているのですね。
母性(実際母親であることが台詞でも表現されている)や包容力と言った言葉が似合うこの感じ、Rohgun新境地か……!?

 

複雑な過去を抱えた敵キャラ・ハンスも同様でした。眉間にとてつもない勢いで刻み込まれた皺、モビルスーツ越しに滲み出る暗い情念。特に後者、丸々一ページ使って表現されていて息を呑みましたね。モビルスーツの目の輝きが涙のようにも見えて唸らされました。


ではこれまでのRohgun色が捨て去られたのかというとそんなことは決してなく、可愛い女の子はしっかり可愛く演出。扉絵やあとがきサービスカットのような王道は勿論、ツナギを着て整備に勤しむヒロインなど変化球もしっかり投げ分けております。

一巻からパイロットスーツとか軍服とか無骨めなファッションのアイリスですが、様々なシチュエーションを用意し、下品にならない程度のセクシーさも織り込みながら、しっかりと魅力を表現され続けています。努力と工夫のきめ細かさが垣間見えますね。

 

 

物語として 

小規模な部隊同士の戦いが続くことに「ガンダムの存在の大きさ」を生かした理由付けを施しつつ、前作「刻に抗いし者」との繋がりも掘り下げることにより、作品の世界がよりくっきりと浮かび上がっておりました。

 

前回は知らずとも楽しめるのでは! と前回言った気がしますが、何だかんだやはりファンとしての予備知識があればあるほど楽しめる奥深さがあるように思います。

それを感じたのが、の主人公のヨーンが、蓄積された戦闘データを通じて前作の主人公の存在を感じる場面。


かつて、セガサターンで「機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY」というゲームシリーズが発売されておりまして。

一番最初の「機動戦士ガンダム」と同じ時代を舞台にした作品なのですが、おまけとして「有名なエースパイロット』のデータを用いた戦闘シミュレーター」みたいな体裁で、アムロの乗ったガンダムと戦えるんですよね。ゲームぢからもあまりない尼野ゆたかでして、ジオン軍の兵士みたいに翻弄されぽこぽこ撃墜され一度も勝てなかったのですが、そのことをふっと思い出したりしたのでした。
人生が共にある……というほどの真摯さでガンダムと向き合えてはいない尼野ゆたかですが、それでも思い出の端々に宝物のようにモビルスーツが埋まっているんだな、なんてことを思ったのでした。

 

 

次で完結というのは寂しいところ

その他にも、戦艦対戦艦の砲撃戦があったり、原作を彷彿とさせるようなインパクトある台詞回しが飛び出したり(「だけど手も止めてない!」)、まだまだ色々と語りたい部分もあるのですが、長くなりすぎそうなのでほどほどにしておきましょう。


連載はいよいよ最終回。少し寂しくもありますが、どのような結末を迎えるのか楽しみに待っていようと思います。

BGM: 月姫 / 陰陽座