そういえば「空海 KU-KAI 美しき王妃の謎」観たんですよ
そういや結構前の話ですが、日中共同制作映画の「空海 KU-KAI 美しき王妃の謎」を観に行きました。
L文庫の担当さんの名刺の裏がKUKAIになっているなど、えらい販促に力が入っていたこの作品。元より興味があったのですが、公開も終盤になった頃合いに知人が「猫が活躍するらしいので観たい」と言い出したので、よっしゃそれなら観に行くかと行って参りました。
とうに公開終了してますしネタバレも恐れなくていいかと思われますので特に遠慮もせずに書きます。
タイトル
よく言われる通り空海の話じゃありませんでした。空海が果たすのは探偵~狂言回しの役割で、言ってみたら八つ墓村に「金田一耕助 戦国の呪い」みたいなタイトルがついたようなものでしょうか。
「妖猫伝」という原題がもっとも内容に近いと思われますが、まあ興行的なあれこれも踏まえて最適だと判断されてのことなのでしょうね。
実際なんだかんだで沢山観に行ったみたいですし、終わりかけのタイミングで観に行きましたが割合客が入ってましたし、これはこれで正解だったのでしょう。
生き生きした猫
見所はやはり猫のCGでしょうか。猫らしさをしっかり表現したリアリティ、その一方で元人間であることを伝える感情豊かな所作。見事でした。欧米のものにも負けずとも劣らない仕上がりと言えましょう。いやー圧倒されましたね。
衣裳の煌びやかさ、セットの凝りようにも目を奪われることしきりでした。「宴」のシーンなど圧倒的など派手さでしたが、ここでは少々画面酔いしてしまったり。3Dとかでも酔ったことはないのですが……体調とかの問題もあるのかな(ちょっと寝不足だった)。
予備知識はなくても観られる
一緒に観に行った知人は「楊貴妃の名前ぐらいは知っている」くらいの感じで、要するにほぼ時代背景の予備知識ゼロで乗り込んだ形なわけですが、概ね話の理解に問題なかったと言っていました。
ですが、「この人は誰でどういう人」という解説がないので、李白が説明もなく酔っ払ってたり安禄山というデブがぽんと出てきたり、あるいは長恨歌がキーになることが示唆されたりしてもぴんと来ず、多少困惑することはあったようです。
まあ邦画で坂本龍馬や本能寺が登場する際長々と説明することがないのと同様でしょうから、致し方ないところではありましょうが。
では知らない人は事前に予習すればいいのかというと、それも難しいんですよね。この辺の流れを赤いシートで隠して丸暗記みたいな感じで覚えても、身に染みて味わえるかというとそうでもないでしょうし。
坂本龍馬をもう一度引きますと、「薩摩と長州を結びつけ倒幕の動きを決定づけた」とか「暗殺された」とか丸暗記しただけでは、坂本龍馬というアイコンが持つ日本の夜明けぜよ的キャラクター性を把握できないじゃないですか。そんな感じ。
メイン部分はいかがか
次から次へとめくるめく展開が繰り広げられる本作。本筋を担う部分は、大変惹かれるものがありました。「棺桶」のシーケンスなどは知人と揃って思わず息を呑みましたね。それまで様々な超常現象を駆使していた妖猫がただの猫として描写され、その無力さを見せつけられる瞬間。胸を抉られるかのようでした。
ストーリーや登場人物については、もう少し刈り込むこともできたかもしれません。しかし、アクションから悲恋からアベカンまで様々な要素がてんこ盛り、足し算に足し算を重ねて積み上げるというつくりなんですから、その豪勢さをこそ楽しみたいところです。
今後も共同制作はあるのかな
あちらでも中々にヒットしたようですし、
これからも同様の映画を作るための環境の整備についても、政治レベルで合意がなされたということだそうで。
下の記事で関係者の発言として引かれている「売れる合作映画がより多く誕生することを願う」という言葉はまた直接的でありますが、まあ資金と労力が注ぎ込まれた作品がそれに見合う成果を上げることは、次にも繋がってとてもよいことですしね。
ハリウッドボリウッドに並ぶ映画拠点が東アジアに生まれればいいなあ、とか。
BGM: I Don't Need No Doctor (Live) / Humble Pie