ブラックパンサーを観てきた
東京から戻った後、知人とブラックパンサーを観てきました。割合ネタバレ気味。
もう公開一ヶ月だしそういう前置きもええかなーと思ったんですが、アメリカでは5週連続一位とかいう話もあり、日本でも今から観に行く人がひょっとしたらいるかもしれないということで一応。しかしアバター以来とは……すごいのう……。
ブラックパンサー=ティ・チャラというキャラクター
シヴィルウォーでは若干直情的な部分にフィーチャーされている感があったブラックパンサーことティ・チャラですが、今回は様々な側面に光が当たり、本来の彼がいかなるパーソナリティの持ち主なのかということをしっかり理解することができました。
思慮深く英邁な君主であり、また一方で一人の女性への複雑な感情に揺れる一人の若者でもあり。
妹・シュリとのやり取りではコミカルな横顔も見せつつ、キルモンガーというある意味「影」となる存在を対比させることで、より彫りの深いキャラクターとして表現されていたのですね。
メッセージ性、テーマ性
いわゆるスーパーヒーロー映画においては、圧倒的な能力を持つヒーローたちが「正義とは何か?」「何のために戦うのか?」という問いを突きつけられることがしばしばあります。割と悩み少ない方だったソーでさえ「バトルロイヤル」で衝撃の事実と直面していました。
ティ・チャラもまた、極めて重い命題と向き合うことになります。
明快な正解はなく、一方「敵役」のキルモンガーが提示するアンチテーゼは歴史を下に敷いた迫真性を有し、しかも死んだ父の存在が複雑に絡んできます。単純お気楽アクションとは言わせない、現実の国際社会を二重写しにした深刻な葛藤は観てて息苦しいほど。
だからこそ、それを経て彼が答えを出していく姿には胸を強く打たれました。
解決した結果を見せるのではなく、方向性を示すところで留める……というスタンスは(近作において)たとえばズートピアでも見られたものですが、現代において説得力を持たせるのにはやはりそれが一番なのかな……。
アクションシーンに着目してみると
おお、と瞠目させられたのが(まああちこちで目を見張って眼球がとれそうなのですが)、アクションシーン。キメのポーズや味方同士のコンビネーションなど派手なギミックを多用し、大変華麗な仕上がりになっていました。一緒に観に行った知人は「殺陣っぽい」と評していましたが、確かにそう言える感じもありましたね。
ただしダンサブルな形にはならず、一撃一撃が重そうなのはやっぱりハリウッド映画ならではでしょうか。
「最強の将軍」が女性であるがゆえに導入された手法なのかもしれませんが、ムキムキマッチョマンがぼこすかドツキ合いするみたいな絵面にも負けない迫力で満ち溢れておりました。
あとはそうですね、多対多でわっと激突するのも熱いところでした。複数の戦闘が同時に繰り広げられる。ああいうマスゲーム的なバトルは本当に大好き。インフィニティウォーでもど派手なのがあるみたいで、今から心底楽しみです。
世の中を映す鏡としてのエンターテイメント
ワカンダの政治体制が「各部族のトップが王の前で合議を行う」といういかにも前時代な仕組みでありながら、実際には参加者が同等の立場で意見を交わしているように見えるのも面白いところです*1。
決闘で王を決めるという一見野蛮な権力移行プロセスも、可能な限り対等な条件で実施されるようになっていますしね*2。
これら、「原始的に見えるワカンダの仕組みが、実は公正さを有している」という描写は、「公平平等を期すはずの仕組みが制度疲労を起こしているのでは?」という現代的な懸念を反映している……と取れないかなあみたいな。
他にも、国連の場において「先進国」がワカンダに対し「農業国家が何をしてくれるっていうんだ?」と嘲笑を浴びせるところなど、実にアイロニカルであるように思えます。「愚か者が作る壁」みたいな分かりやすい部分に目が行きがちですが、他にもあちこちに織り込まれている感じですね。
同じものを観ても
一方、知人はしっくりこなかったようで、特にワカンダの自然などは「なんかジオラマみたいだった」としきりに首を傾げておりました。最初「そんな! あそこはああだしここはこうだろ!」と説得を試みたのですが、観てぴんと来なかったものを後から説明して覆すのは至難の業であり、諦めざるを得ませんでした。
これは別に文句を言っているのではなく、自分の感じ方が絶対正しいのではない、人それぞれなのであるという分かりやすい例であるために書き留めた次第です。やっぱりそれは心しておかないとね。
まとめ ~幸運を実感するという希少な体験~
これだけ長いシリーズの中の一作であるのに、単体の映画としても十二分に楽しめる作りなのも凄ければ、これだけエンターテイメント性を重視した作りである一方で、明確で強烈なメッセージ性を表現しているところにも圧倒されます。
三つの「フェイズ」と二十作近い作品数を経てなお新たな地平を開拓し続けるというこの怪物じみた力、そしてそれをリアルタイムで追えることの幸福に震えてしまいます。
何事についても遅すぎたか早すぎたかという感想ばかり持ちがちですが、ことマーベル・シネマティック・ユニバースに関してはほぼベストタイミングで体験できているなという実感がありますね。
BGM: The Color of Blood / Misery Index
拍手のお返事
00:09 外出時のおやつ代は300円までです。(バナナはおやつ代に入りません。)
さすがにそれは超えてしまいました……。今度はバナナを携帯していかねばならないか……。