お茶零した。

作家・尼野ゆたかの日記です

チェスター・ベニントン。痛みを歌った彼を、悼みたい。

数日経ちましたが、いまだに結構な衝撃です。

11月のメッセ来日公演、チケット取ってたんですよねえ。わりかしライブ行く方ですが(ただし最近あまり行けてない)、リンキン観るのは初めてなんで、楽しみにしてたんですが……。

 

Linkin Parkチェスター・ベニントンを知らない人のために

なんて大きく振りかぶってみたものの、このクラスの人気バンドだとネット上でいくらでも情報を拾えますし、Youtubeには画質のいいPVが公式配信されてますし、今更訳知り顔で語ったところで必要とされるかどうかは怪しいもんです。

しかし振りかぶったんならなにがしかの球を投げないとボークになってしまうので、自分なりに彼らの特徴がどんなところにあるか話してみましょう。

 

 

オタク文化との親和性

 

かのGONZOが制作したことで有名なPV。監督は中澤一登氏。

いかにも海外受けしそうなタッチでの格好良さは勿論、メンバーの演奏シーンもしっかり再現してて見事の一言。バンド側のサジェスチョンも大きかったのかもしれませんが*1、チェスターが背中丸めるタイミングや楽器陣がジャンプする時のアングルまで完璧で唸らされます。

これ、どのバンドなりミュージシャンなりでもこれだけハマるかっていうとそうでもないですよね。極端な話アデルやらサザンオールスターズやらがこうしてもしっくりこないでしょう。楽曲の持つ空気感が、抜群に相性良いんです。

 

 

ということもあってか、Linkin Parkはその手の作品ともよくタイアップしています。たとえば映画のトランスフォーマーシリーズは、三作目まで彼らが一貫して主題歌を担当しました。

 

3作目ダークサイド・ムーンの主題歌である"Iridescent"では、トランスフォーマーたちとの共演も果たしたり。

 

 

ゲームの主題歌も担当してます。これはメダルオブオナーウォーファイターのテーマソング。

しかし良い曲だなあ……。疾走するリズムの上で俺はガラスのお城に入ったひび割れに過ぎないんだという痛切なメッセージが舞い散る様には、問答無用で胸を打たれてしまいます。

 

さて、ここまで見てきて浮かんでくるのは、Linkin Parkがオタク的なものと「単にたまたま親和性が高いだけ」なのか、それとも「深い部分で通じるものがある」のかという疑問ですね。

理科の実験ではないのでそんなはっきりと分かるはずもありませんが、参考になりそうのがこれ。

 

ガンプラが大々的にフィーチャーされていることで有名なPVです。曲名をGoogle検索すると「Somewhere I Belong ガンダム」とかサジェストされますし。

ガンダムファンとしてはお話にならないくらいヌルいので、改めて観てもデカデカと写る赤いのがサザビー*2だなー奥の方にあるのはデカい羽根ついてるしウイングガンダムゼロ*3かなーくらいしか把握できません。なので調べてみると、サザビーの横に立ってるのはGP01ゼフィランサス*4で、羽根ついてるのはウイングガンダムゼロではなくウイングガンダムゼロカスタム*5らしいことが分かりました。そうかこれゼフィランサスか……0083観たのになあ……ガンダム力足りてねえなあ……。

ガンダム知らない人からすると目が滑る話でしょうが、まあまあお待ちなされ。ここがポイントなんですよ。そう、チョイスが相当にマニアックなんです。

Linkin Parkからしてみると、ここで凝ったガンプラを出す必要はありません。観る人間の9割9分9厘以上は、ガンダムが何なのかよく知らないかそもそも機動戦士ガンダムというアニメの存在すら知らないかのいずれかです(多分後者の方が遥かに多いでしょう)。なので適当にザクやらドムやらをぽんと置いていてもバカにされることはありませんし、そもそもガンプラを出す必要性自体そんなにないはずです。なんかそれらしいこじゃれた小物でも置いときゃいいって話です多分。

だというのに、あえて劇場版やOVAに出てくるような機体ばかり選んだ。その事実は、彼らが相当にOTAKUであることを強く示唆すると思われます。オタク文化との相性の良さは、ただ上辺だけのものなのではなく、もっと深いところで繋がっていると考えられるわけですね。

 

 

「チェスターの声」という楽器

 

グラミーも獲った、1stアルバムからのセカンドシングル。リンキンと言えばこれという人も少なくありますまい。

ゆったりとしたテンポに耳馴染みのいいメロディの曲、だからこそ際立つのがチェスターの声。そっと歌う部分の繊細さと、サビ前から炸裂する壮絶なほど歪んだ声の対比に沢山の人が度肝を抜かれました。SLAYER(スラッシュメタルという騒々しいジャンルのメタルにおける帝王的な存在であるバンド)のケリー・キングも、Linkin Parkのデビュー時に「あいつの声はファッキンオーサムだな」みたいに褒めてたと何かで読んだ記憶があります。

この唯一無二の声に、マイク・シノダ(名前や顔立ちからも分かる通り日系人です)のラップを絡ませることで、Linkin Parkはカラフルな世界を描くことに成功していました。ライブだとここまでしっかりしてなかったみたいですけれども、まあそれはそれこれはこれ。

 

 

苦しみ哀しみにフォーカスした楽曲

 

一番好きなPV。人の輪に入れない若者の孤独を3分で見事に描ききっています。

 

英語にはTeen Angstという表現があって、直訳すると「10代の苦悩」となります。中二病に対応する感じの言葉かと思われますが、Linkin Parkはそれを表現するバンドの代表格とも言われるそうです。実際、死去について海外のパンピィの人等の反応を見ると「中高の頃よく聴いたわ……」みたいなのが多いですし。

ここから分かるのは、「Linkin Parkのような音楽は、いずれ卒業するものである」という共通認識が暗に存在しているということです。辛い辛いとわめくのはやめ、甘んじて受け入れるこそが大人になることだと定義されているわけです。

 

まあ、それはそうでしょう。めそめそしたところで何も変わりはしません。独立した一個の人間であれば、立ち向かうなり折り合いを付けるなりして、上っ面だけでも明るく振る舞わねばならないのです。

 

しかし、オマル・ハイヤームも似たようなことを言ってた気がしますが、人生が楽しいとか幸せな毎日とかいうものはそれこそ現実逃避のお花畑です。憂いと哀しみは、常にすぐ傍に立って亡霊のようにこちらを見ています。誰もがいつもそれに鈍感でいられるわけではありません。辛いもんは辛いんです。

 

その辛さに打ちのめされた時、Linkin Parkの奏でるメランコリックでやるせない音楽は、一つの支えになってくれるのではないでしょうか。聴く者が、どれだけ年齢を重ねたとしても。

 

 

なぜチェスターは命を絶ったか

 

音楽雑誌と言えばBURRN!と時々METALLIONくらいしか読まんもんで、Linkin Parkのインタビューを目にすることは今までありませんでした。そこで、今回のことを期にネット上で読めるものに目を通して見たのですが、どうもチェスター自身がずっと生き辛さを抱えていたようです。

5000万枚以上CDを売ってもなお癒えぬ苦しみがいかほどのものかは、想像するほかありません。「親友だったというミュージシャンのクリス・コーネルの自殺が、彼の繊細すぎる精神に痛撃を加えた」という説もまことしやかに語られていますが、故カート・コバーンの如く遺書等が残っているわけではないので、それも推測の域を出ないでしょう。

 

一つ感じるのは、多分いつ起こってもおかしくなかったということです。

上に挙げた"Numb"は、不朽の名作である2ndアルバム「Meteora」に収録されている曲ですが、歌詞には"And I know, I may end up failing too"という一節があります。

分かってるよ、俺も結局は失敗してしまうのかもしれない――そんな諦観にも似た独白は、続く部分と合わせてどこか予言めいた響きがあります。自分の脆さを一番分かっていたのは、彼自身だったということなのでしょうか。

 

いずれにせよ、極東の島国の片隅にある22時を回ってもクソ暑い部屋で自分のような人間がいくら考えを巡らせても、詮無いことといえば詮無いことです。しないといけないことに取りかかった方が間違いなく賢明でしょう。

しかしまあ、かつて何度も何度も繰り返し彼らの音楽を聴いた人間の一人として、今の気持ちをなにがしか形にしておきたいなあなんてことを思ったんですよ。誰にも届かずとも、あの頃の自分がこれを読めばきっと納得するはず。

 R.I.P.

BGM: Numb / Linkin Park 

 

 

 

 

 

 

Web拍手のお返事 18:53 ハッハハ
くっ……本文納得いく形で書き切れたと思ったのに、アンコールにあたるここでこんな投げっぱなしのコメントにレスを書かないといけないのか……!?
というかこれ最初のテスト投稿のタイトルでしょ! あれは単に特に書くことが思いつかなかったからレイジアゲインストザマシーンの真似をしただけです ! それをわざわざ真似しなくてもええがな!  

19:04 https://www.ayataka.jp/
まったく誰だWeb拍手綾鷹置いていったのは……うっかりこかして零してしまうところだったじゃないか……。

 

 

 

 

 

 




*1:メンバーであり、PVの監督も多数担当しているDJハーンとの共作

*2:劇場版作品「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」に登場

*3:テレビシリーズ「機動戦士ガンダムW」に登場

*4:OVA作品「機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー」に登場

*5:OVA作品「機動戦士ガンダムW Endless Waltz」に登場

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